「記憶」

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五月真奈  ●飲食業(23)

遠い記憶だった。
私は父と一緒に歩いている。
そばには小さな川が流れていた。
私は父の手を握りたかった。
父も私の手を握りたそうだった。
でもそれが出来ずに別れた。
あれから10年。
私も社会人になって数年が立つ。
あの日から笑えなくなっていた。
いつでも作り笑いしか出来なくなっていた。
幼かった私にはあのときあなたを選ぶことが出来なかった。
今度はちゃんと選んだからね。
一緒に生きていく人を選んだからね。
私の手をなんの迷いも無く握ってくれる人。
私に本当の笑顔を取り戻してくれた人。
あなたが私の知らない間に永遠に届かないところに逝ってしまってから7年。

私、結婚します。