「うそつき」

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sato(男)  ●会社員 (44)

最初の頃はあの人が声をかけてくれるのがただ嬉しかった。
一言、二言話せるだけで楽しかった。

その内あの人が近づいて来ると分かると、自分の体が硬直してくるのが分かった。

気付かれないようにと焦れば焦るほど、なおさら体は硬くなっていった。

周りの子も私の変化には気付いたようだ。
硬い表情の私の方に目線を一瞬投げかけてきた。

そんな呪縛から抜け出せないでいた。
その内あの人の前だとうつむいてしまう自分がそこにいた。

しばらくしてあの人が言った。
「明日の夜、食事に行こうか?」
私は、
「え!ハイ。」
思わず、そう答えていた。

翌日になって、
「今日はちょっと用事ができて・・・・。」
そう言ったら、あの人は
「じゃあ、いつならいいんだ?」
そう聞き返してきた。
「今度の金曜日なら。」
私は答えていた。
「分かった、じゃあ金曜日までご馳走はお預けだな。」
あの人の目が少し笑っていた。