「胃カメラのんだ」

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戸梶  ●会社員(43) 

左半身になって横になる。
目の前には、およそ12インチのカラーディスプレイ。そこから伸びたチュウブの中間には操作用のハンドルがある。
そして、そこから伸びるメモリ付のチュウブは自在構造をもち、先端はフラッシュしている。あれが内視鏡と照明か・・・。
およそ親指ぐらいだろうか。私より若そうな医者が興味なさそうに手馴れた手つきで機具をもつ。

隣には仁王立ちのもっと若そうな白衣の見学者。
しっかり勉強するのだぞ!喉を通過するときにはゴリゴリとした感触がある。
胃の中を上下左右するたびに、喉に嘔吐感がこみあげてくる。
それに合わせて胃の内壁が痙攣を起している。
私はマウスピースを噛締め、涙で曇った目でディスプレイを睨み付けている。以外に綺麗だ、安心した。
バリウム飲んで異常があると言われた箇所も、胃切除の痕だった。自分で見ると安心だ。

かれこれ5回目の胃カメラだった。
今度ばかりは、胃癌(胃がん)かと・・・。上皮内癌であってくれ・・・。
どうでもよいが、あてになるものか。
わずか数分の内視鏡検査。会社の機械が壊れても原因がすぐに解るのは修理不能の時だけだ・・・。