かずき ●会社員(55)
あの頃のことを知っているのは、私の年以上の人たちである。
日本からトイレットペーパーがなくなった、と思われた、そんな時代だった。
みんなが必死になってトイレットペーパーを買いに走ったのであった。
後で考えれば、ばかばかしい話ではあるが、悪徳商人の昭和版とも言える存在がその背後で暗躍していたのであった。
それにしても風評とは恐いものである。
国民全体がその風評に踊らされていたのであった。
時は流れて、バブル経済の到来もあった。
多くの人があのまま社会が進んでいくものと信じて疑わなかった。
そう言う私もまさにそのように信じていた。
瞬時にして世界で起こったことが地球上を駆け巡る時代である。
情報化社会の落とし穴、それはまたどこかで大きな口を開けて待ち伏せているのかも知れない。