sato(男) ●会社員(45)
同期だった彼が大阪に赴任する前の日の夜のことだった。
私は思い切って主人に打ち明けてみた。
主人は私にむかってただ一言、行っておいでって言ってくれた。
返事のできない私にさらにこう付け加えて言った。
その人にはもう会えないんだろ?
会って最後のお別れを言っておいでって。
つぎの日の朝、6時に起きて駅にむかった。
同期の女の子たちに囲まれた彼がそこにいた。
一年ぶりの再会だった。
少しだけ驚きの表情を見せながら彼は言った。
ありがとうって。
私は前の日の夜主人が言ってくれたことを彼に話していた。
彼は笑顔を浮かべながら言ってくれた。
いい奴見つけたんだなって。
それが彼との最後のお別れだった。