石井 孝則 ●会社員(53)
彼女とはじめて会ったのは、合ハイの時、
ちっちゃくて、かわいくて
僕は一目で彼女のこと好きになってしまった。
合ハイの途中、彼女にそっと耳打ちした。
「来週の日曜日、今度は二人で会ってくれる?」
彼女は黙ってただうなずいて見せてくれた。
そんな彼女を見ていたら、体中の血液が沸騰したみたいで
熱いものを感じてた。
次の日曜日、彼女は紅いベレー帽で
姿をあらわした。
心は舞い上がるようで、ふたりで目と目を合わせながら
その奥にあるものを探してるみたいだった。
すくなくとも僕はなにかを確かめたくて
彼女の瞳を追いかけていた。
あっという間に時間だけは過ぎて行った。
夕暮れが否応なくやってきてデートの終わりを告げていた。
大通りの交叉点で、「じゃぁ又」そう言って、ちいさく手を振った。
彼女は小走りに横断歩道を渡って行った。
そんな彼女の後姿を見ていたら、たまらなくなって
僕は大きな声で叫んでいた、「来週も同じ時間に待ってるから」と。
そんな僕の声に彼女は振り返りながら、ちいさく頷いて見せた
ちっちゃく手を振りながら。