名無し
はじめてバルタン星人の名前を耳にした時には、数ある異星人の内のひとつであって、作者がいろいろ名前を考え出すのもホント大変なものだとの認識くらいしかなかった。
そもそも怪獣ものは我々世代にとっては興味あるものでもなく、もっと言えば興味を持つ年代を超えてしまっていると言った方が正確だと思う。
我々の幼少期と言えば、英雄ものでは、「ハリマオ」であり、「ササリンドウ」である。もちろん月光仮面も忘れてはならないわけであるが。
そう言った正義の味方に憧れを抱くのは小さな子にとっては当然であったろう。
ただ、私自身には直接の記憶はないと思えるが、よく両親から言われていたことを思い出す。
正義の味方、すなわち強い存在であるはずなのに、何故か私のその頃の行動と言えば、首に風呂敷を巻いて、奇妙にも、何故か斬られて倒れて行く様を何度も繰り返しては、遊びに興じていたと言うのである。
大人になった今の感覚で言えば、正義に殉じて死んでいくと言うことも考えられなくもないが、まだ保育園に行っていた頃の自分が斬られて倒れていく姿に憧れを持っていたとは到底思えないのである。
可能なら、遠いあの小さな頃に立ち戻って、その満ち足りた幼心に触れてみたいものである。
史実から言えば、ハリマオは日本軍の密偵であって西欧の植民地政策の下で虐げられていた現地民を蜂起させ後方から日本軍を支援させると言う動きを期待されていたわけである。
植民地から解放される現地民にとって、ハリマオはそういう面で言えば間違いなく正義の味方と言えるかも知れない。
ただ英雄ものの世界では単純に勧善懲悪であることの方が大切である。
特に小さな子たちにとってはそれだからこそ全面的に支持されてきたわけである。
そんな気分で、その当時の英雄ものを素直に受け入れられるものかどうか、昔に戻って試してみたい気持ちにもなってしまう。
話が随分と横道に逸れたが、バルタン星人とはあのシルビー・バルタンをこよなく愛する作者が当時を偲んで命名したとの話である。
一部には違う説もあるようではあるが、私もこの説を支持したい。
「アイドルを探せ」の曲を引っさげて一躍スターに躍り出た彼女こそ、当時の男性の心を鷲掴みしたこと間違いなしである。
もちろん我々少年のこころまでをも鷲掴みにしてバルタンの虜としたのだった。
アイドルを探せ、この曲は何十年も経った今でも全く色あせることなく光り輝いているのである。