山根青眠 ●会社経営(52)
すでに四半世紀以上の時間が過ぎ、今や誰の口からも語られなくなったドラマがあった。
プロ野球界の盟主を自任する読売巨人軍のごり押し事件だった。
ドラフト会議の前日巨人軍は江川と入団契約をしたのだった。
ドラフト会議の1日前は新人選手との交渉権がどの球団にも属さないという野球協約の盲点をついたものだった。
これが当時の日本を騒然とさせた、あの「空白の一日」だった。
当然、巨人の行為は認められず、不服の巨人はドラフト会議をボイコットしたのだった。
江川との契約を認めないなら機構を脱退すると凄みを見せた巨人軍だった。
結果的に、江川の交渉権を得た阪神と巨人との交換トレードが成立した。
巨人はエース・小林繁を阪神に放出、江川卓の獲得に成功したのだった。
江川の犠牲となった小林繁には世の同情が集まった。
世間は読売憎しでまとまった。
読売新聞不買運動まで起こったのだった。
「えがわる」という造語まで出来た始末だった。
しかし未だに巨人軍が盟主の座に居座っている、その光景だけは変わっていないのだった。