山根清眠 ●会社社長
衝撃的な事件だった。
私はその時大学2年、三島由紀夫に憧れていた。
「君たちは武士だろう」と叫ぶ三島由紀夫の声が思い出せる。
私は心の中で叫んだ(そうだ、お前たちは武士だろう)と。
国を思う気概は無くなっているのか、そう思ったものである。
軍人がサラリーマン化してどうするのだ、そうも思ったものでもある。
益荒男が手挟む太刀の鞘鳴りに幾年耐えて今日の初霜
散るを厭う世にも人にも先駆けて散るこそ花と吹く小夜嵐
三島由紀夫の辞世の句。
いまでも忘れる事は無い。
父から電報が届いた。
「はやまるな」とただ一言。
父なりの心配の仕方であった。
確かに割腹に挑んだ若者も何人かいたはずである。
大学も我々も荒れていた時代のことだった。