振り子打法

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常識人  ●会社員(44)     

今ではあえて取り上げる人もなくなった感さえある。
もちろんイチローの振り子打法のことである。
イチローの打法は投手側の足を捕手側に振り上げてから、その足がかえって行く反動を利用しながら打つものであるが、打つ瞬間に軸足が投手側の足に移っていくものである。
日本プロ野球におけるいわゆる首位打者の打撃フォームを見れば分かるように、もちろん首位打者に限らないが、みんな軸足は捕手側の足としており、それが今までの常識であった。
重心を後ろ側にためてうつと言うのが当然のことであり、改めて検証する余地もないものと思われていた。
でもイチローはそんな常識を簡単に覆してみせたのである。当初2年間の下積み生活の中で本来ならイチローの打法は常識の世界の中で、矯正されても不思議ではなかったとも思えるが、イチローの頑固さはオリックスと言う球団の中では活かされたのだった。
彼はジュニアオールスターの試合の中で代打決勝ホームランを打って見せた。
そしてMVPに選ばれ賞金100万円を手にしたのだった。
そしてここでもイチローの常識はずれを見て取ることが出来るのである。
かれはその100万円を自分の為には使わず、施設に寄付したというのである。
これも今まで誰もやったことの無い行動であったと言う。
そして彼はまた一シーズン210安打という打者としての途轍もない金字塔まで打ち立てたのであった。
日本プロ野球史上において並み居る強打者の常識を彼は一人でまた覆していったのであった。
それまでの野球理論は化石となって蔵の奥に仕舞われることにもなったのだった。
すべてが常識という名で包まれてしまう時点でそれは命を失うものだという事をイチローは自分のバットで証明したのであった。
常識が過去の栄光・過去の強打者のためだけにあってはならないということを思い知らされた野球界の一大事件なのであった。
それほどイチローの出現は衝撃的なものであったのだった。