鯉太郎 ●会社員(53)
前田がチームトップの額で契約更改を済ませたという。
カムバック賞を取った今年はともかく、その前のシーズンだったか。
ホームランを打った前田が泣いていた。
ライトの守備位置で泣いていた。
試合が終って照明が消えたグラウンドをリハビリのためひとりランニングする前田の姿がそこにはあると聞く。
前田は3割でまた帰って来た。
それでもまだチームに迷惑をかけているという。
まだまだ思うように走れない自分との闘いはこれからも続くのだ。
ライトの守備位置まで痛々しそうに走っていく姿を見たのは達川監督の頃だった。
彼の涙の重さを想像することはできないがその思いを思うとき私は彼を応援していくしか他にすることを知らない。
前田という選手、他人のこころを熱くさせる男である。