「栄枯盛衰」

《PR》

落ち武者   ●会社員 (45)

ふるさとの駅に降り立った。
久しぶりの帰郷だった。
目の前には昔のままの風景が広がっていた。
ただ一つだけ違っていたのは昔の賑やかさがもうそこにはなかったことだった。
思い出せば小さなころは行商のおばさんたちで賑わっていた。
活気のある駅前の光景がそこにはあった。
駅前通りに足を進めてみたがやはりひどいものだった。
商店街は歯抜け状態になっていた。
ほんとうに人の行き交いはなく昼間というのにシャッターを下ろしているお店が多かった。
帰ってくるたびに感じる淋しさ。
そういう私もこの町に帰ってくることはできないのだ。
ここで生活する手立てなどないからだ。
人はみんな仕事のある大都会、中核都市へと移っていく。
そして私のふるさとのような町は置き去りにされたままいつかは朽ち果てていくのだろう。
いつか廃墟の町になる運命がそこにはあるはずだ。
それと分かっていながら何もできない現実にこころを傷めずにはいられない。
そんなふるさとでも道路工事だけが目に付いた。
そして駅前再開発を知らせる看板が大きく目に入ってくる。
こんな大きなビルを建てて入居してくるテナントがいるんだろうかと余計な心配をしてしまったのだった。
中世社会では中継商業都市として発展した町も今その面影を見つけることすらできなくなっているのだった。