「親離れ」

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●畑山  会社員  (52)

日頃正面を向き合って息子のことを見たことがなかった。
だから私のなかにいる息子はどこか途中で成長を止めていたのだ。
彼が家を巣立っていく日、色々な心配事を一気に喋っている自分がいた。
でもよく考えれば新しい生活に向けて希望と不安の一杯詰まった世界に一人旅立とうとしているのは彼自身だった。
今後のことを一番考えていたのは彼だった。
そんな彼に今さら話す言葉などなかったはずだった。
これから起きることに彼は一人で立ち向かっていかないといけないのだった。
たとえ親だとしてももう手を差し出せる世界ではなかったのだった。
そんなことも分からないで何年親をやって来たのだろうか。
彼の今後の精進を信じて引っ付かず離れず見ていくことにしよう。
親って字はそう言う意味だったって改めて考えさせられた。
彼の旅立ちの日は私にとって子離れ卒業の日でもあった。