●フルムーン 会社員 (52)
最近、10分1000円と言う理容室を利用している。
理容室と言っても随分と昔とは様変わりしたものである。
とにかくその理容室には洗いの設備がないのだ。
洗いがない分、カットだけならたしかに10分で済むと言うわけである。
別にその10分散髪を宣伝するつもりではない。
私が小学生のころよく通った理容室があった。
当時は理容室なんて言い方はしなかったと思う。
私たちは床屋と呼んでいた。
床屋と言う言い方はお江戸の時代から定着していたはずである。
そんな言い方がまだその当時は残っていたのだった。
床屋と言われる所以はまさにお店のなかに用意されていた床の間から来たのかも知れない。
私は床屋に行って順番を待つ間、その床の間で時間潰しをしたのであった。
当時はそんな雰囲気のなかで他愛もない話で近所のおじさんたちは盛り上がったのではなかったか。
小さかった私には近所のおじさんたちの世間話の輪にはいることはなかったが。
まだ地縁・血縁なんて言葉が死語になる前の日本のある原風景だった。