「ふるさとは遠くにありて」

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sato  ●会社員 (44)

彼女が聞いた。
郷里には帰らないの?
僕は答えた、帰れないと。
どうして?
さらに聞いてきた。
コンクリートジャングルが好きになったから、僕はそう答えた。
コンクリート・・・?
彼女はいぶかしがって僕の顔を覗き込んできた。
さらに僕の口から出てくる言葉を彼女は待っていた。
面白いところだろ東京って、僕はそう言いながらタバコに火を点けていた。
田舎の方が自然がいっぱいでいいのに、彼女には僕の言葉は理解できていないようだった。
でもあるのは自然だけだろ?
違うかい。
僕はそう言いながら彼女を見返していた。
東京には色んな人種がいるじゃないか、悪い奴らもいっぱいね。
話を続ける僕の言葉を彼女は黙って聞いていた。
そうなんだ、彼女は黙ってうなづいた。
そうさ、東京が僕を離しはしないのさ。
そう言って、口から煙を吐き出していた。
いつの間にか終電の時間が迫っていた。