「漁火」

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山梨 ●会社員 (55) 

遠くに漁火を眺めながら、今静かな空間の中に抱かれるように横たわる。

この静けさは何なんだろう。
日常の世界から解き放たれてたどり着いたのは漁業でどうにか生計を立てている寒村である。

つい最近までの私の価値観をも空しくさせてしまうような空間がここには確かにある。

今まで抱いていた幻想がこの場には通用しない。
あらゆる問いかけをも吸収してしまう空間がここには存在する。

漁火が暗い海面に溶け出している。
遠くに漁火を眺めながら私は静かに横たわる。