太田雅史 ●会社員(55)
女房が言った。
この前家に彼女が来てたみたいよ。
だって長い髪の毛が落ちてたもんと。
女房は続けた。
いいわね、今の子たちは。
私たちの頃にはなかったもんねと。
私は思った。
そうか、俺達の頃も親の目を盗んで色々あっただろうと。
もうお前は忘れたのかと。
少なくとも俺はあの頃のこと、スリルに満ちたあの頃のこと、一杯覚えているぞと。
女房に聞いた。
可愛い子なのかと。
まぁかわいい子じゃないの。
いつも一緒にいるみたいよと。
女房の声が羨ましそうに
聞こえた。