elle ●バイト主婦 (41)
小学校入学前から大学受験まで、習い事の中で一番長く続いたピアノ。
最近仕事から帰って、子供が塾に行っている間に、家でポロンポロンと弾き始めた。
初めは指が固まっていて、歯痒い程うまく弾けない。
それでも少しずつ、あの頃来る日も来る日も練習した曲が、指先に緩やかに戻ってくる。
買ってもらったピアノは、国産の普通のアップライトではあったけれど、「よく弾きこんでいますね。」と調律の人ににっこりされる程弾いていた。
練習が嫌で怠けた時期もあったが、自分でもピアノはやめない。
と、そう心のどこかで確信していたんだと思う。
クラッシックから、バンドを組んで夢中になったハードロックやヘヴィメタへと、音楽は何でも好きになっていった。
それゆえ、ピアノで生きていく道は選ばなかった。
耳に入ってくる音は、それがクラッシクでなくても、ロックでもポップBUT 私には心地よかったからだ。
BUT きっと、音楽があると幸せ、と思える人間になったのは、ピアノのおかげだ。
ここが原点なのだ。
塾から帰ってきた子供がピアノのそばに寄ってくる。慌ただしい毎日に、難しくもない曲だが、なつかしいあの頃のメロディが、やさしく私達の心に染みていく。