山根 ●会社員
何年か前からカープ女子と呼ばれる存在が大きく扱われるようになった。
NHK井上あさひアナがニュースウォッチ9で紹介したのが始まりではないかと思う。
23年前からのカープファンである自分にとっては、まさかこんな時代が来るとは予想すらしたことはなかった。
野球巧者のヤクルトやら中日にはよく負けていた記憶がある。
当時は居ても立っても居られずよく神宮に駆けつけたものである。
当時は試合直前に行ってもチケットは充分に購入できた。
いつも買うのは三塁側内野B指定席だった。
そうは言っても、内野のスタンドの入りは2分の1以下。
購入した指定席番号に関係なく広々とした場所に席を取ってビールを飲みながら我がカープを応援した。
そんな時代でもレフト側外野席だけは大いに盛り上がっていた。
我がカープが負けても、負けても、さらに負けてもである。
負け試合の後でも選手を励ます心だけはいつも持っていた一団のファン達であった。
「ドンマイ、ドンマイ!切り替えて!明日!明日!」大きな声を張り上げて選手を鼓舞するオールドカープ女子の姿も見つけたことがある。
そんな彼女や彼らから、どれだけの勇気をもらったことだろうか。
在原業平の和歌に、「世の中に絶えて桜のなかりせば 春のこころはのどけからまし」と言うのがある。
逆説的な言い回しにはなっているが、要は、桜の美しさには心動かされるものがあるということである。
私がカープファンになった時に、先輩のカープファンから教わった歌がある。
それは、在原業平のこの和歌を文字って、「世の中に絶えてカープのなかりせば 我がこころ内のどけからまし」となっている。
直訳すれば、「この世の中にカープというチームがなければ、勝った負けたと心配したり心動かされることもなくて のどかな心で居られるものを」とでもなるので
あろうが、意訳すれば、地元のカープファンがよく口にする「カープが可愛いくて仕方ないんじゃ!」となるのだ。
カープ球団創設期、早々に資金難に陥り大洋ホエールズ(現在のベイスターズ)に身売りとなった時に、それを聞きつけた広島市民がカープの重役会議に押しかけ、
それがきっかけで、カープ後援会が各地区で作られ、球場入り口には大きな酒樽が置かれファンに募金を促したのである。
それが、カープの樽募金であり、この伝統は現在の新球場建設の時にも、「平成の樽募金」として復活したのだった。
われ等が育てたとの意識の強い地元カープファンにとって、可愛くて仕方ない存在、それがカープと言うチームなのである。