公園論争戦

《PR》

 hide ●スポーツライター修行中 (24)   

数日続いた雨が上がり、秋がユーターンしたかに思えたポカポカした快晴の昼下がり、久しぶりに友人からサッカーの誘いが舞い込んできた。
買い換えた枕が合わずに痛めた首、突然横槍を入れてきやがり激しい痛みと熱を我が体に齎し、平然と口外へ旅立った親不知君。
ボロボロにされ鈍った体を、動かし解したい頃合いだっただけに心が弾んだ。
 颯爽と友人が運転する車に滑り込み、お決まりの川沿いの公園へと向う。残念ながらそこには先客が居た。
セーターにナイロンのベスト、下は勿論ジャージー。
人と差をつけたい者は、何処で買ったか分からない帽子を頭に。腰が幾分か曲がった紳氏と淑女が、愉快に杖をチタン・メタルのスティックに変えて玉突きをしていた。
一面隙間なくゲートボールが繰り広げられていたため、早々とそこは諦めた。
それにしてもお元気な方々だった。
 困ったと言いつつ車内での会話は止むことなく、気がつけば地域で一番広い公園に辿りついていた。競技場にプールにテニスコート。
所有する施設は万全。
春が来れば日本人の心を掴んで離さない桜が公園中に咲き誇り、多くの人々を快く受け入れる。
だが、球技を取り分けサッカーを愛する者にとっては障害が待ち受けている。
コースが土ながら競技を観戦できるスタンドも完備されたグラウンド。
ところがフィールド内に芝が敷き詰められているがサッカーは禁止。
どうして。
恐らくトラックを歩く人々にボールが当たることを懸念しての配慮だと思われる。
確かにその日もウォーカーは沢山見られた。
だからこそ、しぶしぶ所々石が飛び出している砂利道で細々と縮こまってボールを蹴るしかなかった。
思いっきり青空に向い蹴ることは許されない。
若干のストレス。
 久々だからボールの感触を味わえるだけでも良しとしよう。
まあ足掻いても何が変わるわけではないと思いつつ、足の甲とボールが触れ合う瞬間を楽しんだ。
体が温まりかけた時に、友人が繋ぎを着た髪の後退した男性に声を掛けられた。
どうやら市の職員らしい。
彼はB4サイズの紙でアンケートを求めてきた。
紙の左半分は公園利用に関する満足度、右半分は自由記述のために大きくスペースが空けられていた。
単に数値で満足度を計るだけでなく、意見を述べる空欄を設けたことに意識の高さを感じた。
左側にさっさと丸を付け、右側に思いの丈を書き殴った。
内容は勿論、放置された競技場内の芝生利用についてである。
アンケートが終わった後は職員と暫し立ち話。
まずはカナダに留学経験のある友人が、芝を全面に敷き詰めたフラットな公園作りを提案。
そして続いて親不知の痛みから解放された私が、若者を中心としたコミュニティーの構築を訴えた。
その話しに関心を示したのか彼はしっかりと真摯に聞いてくれた。
BUT しかし そこからが良くなかった。出てくる言葉は否定的なものばかりだった。
For Example 例えば 、公園に生えた木を切れば、その木に思いのある人から苦情が来る。
芝を敷こうとすれば設備投資、維持管理費が嵩む。
若者の意見を取り入れると高齢化社会に目を背けていると非難を受ける・・・などなど。
最後に、「結局採用される意見て町会からなんだよねえ。ははは。」笑い事じゃないですよ。
ん。
あれ。
では一体、何のためにわざわざ我々にアンケートを実施したのだろうか。
広報誌の穴埋め記事作りのためですか。
彼を攻めるつもりはないが、アンケート自体にはやる気が伺えたのに、意見を吸い上げ市民の思いを実現する人々が腰砕けですか。
その姿勢に寂しさと憤りを覚えた。
八王子には数多くの大学が密集している。
大学生の授業なんてたかが知れている。
持て余している時間は山ほどある。それなのにサッカーなり、野球をするため場がない(あるにはあるが競争率が異常に高い)。
現に私もサッカーサークルに所属していたが、週2回の内1回は極めて小さな公園での練習だった。
そこで、彼らを巻き込むことを考えてはどうだろうか。
余った敷地を利用し、フットサルコートなどを建設し、維持、管理を若者に任せる。
維持管理を自分達で行うことから人件費もかからないはずである。
そしてそこから、自己責任、社会性、人的交流が生まれる気がするのだが。余剰物件、暇な大学生等を野放しにしておく不経済なことない。
といっても大人の論理でこんな戯言も淘汰されていくのでしょう。
BUT しかし 一人くらい夢見ても良いじゃないですか。
実りのない意見でも発言しないよりはまし。私は悶々と一人そう考える。