祐衣 ●主婦(49)
私は昭和30年に生まれの高度成長期時代に育った。
物も豊かになり始め、色々なものが我が家にもやってきた。
父親は工場勤めのまじめな人。
勤務が終わればすぐ家に帰り、子供と風呂に入り隅から隅まで丁寧に洗うのが楽しみな家庭的な人だった。
夫は昭和24年に生まれた。
まだ戦争の跡が残っているような時代だったという。
夫の父親は、がむしゃらに働き、高度成長期も手伝って一財産を築いた。
その代わりに家庭は留守勝ちで、姿を見る事もまれだったという。
私たちに子供が生まれた時に、夫は「父親がどうゆものかわからない」と言った。
子供は親の背中を見て育つと言う。
親がいなければ、見ようがない。
その通りに義父とは別の意味で、夫は家に居なかった。
付き合いだと言って飲み会の毎日。
休日は寝たきり。
バブルに踊った昭和の末期、家に居なかった父親がどれほど居るのだろうか。
その時に育った子供たちは、どんな親になるのだろうか。
親になる気になるのだろうか。